2007−2 Vol.25 23 SELF HELP GROUP
今月の特集は、谷風五郎さんの体験記です。
24時間営業
谷風五郎
こんにちは、私は谷風五郎と言います。精神障害者です。発病してから18年になります。それで、発病してからの自分を、自分なりに振り返って、感じたことを書きたいと思います。
私は、大阪の会社で悪戦苦闘しながらも自分なりに頑張っていました。ある時、ふと会社の中で周りの人にはあって自分には無いものに、気がつきました。
それは、会話でした。
なぜ、自分は話ができないのだろう、最初はそんなに気にしてなかったのですが、そのことが頭の中から離れなくなりました。
(いまから考えると、その頃から現実にありえない「声や音」が、聞こえ始めたと思います。)
休日に部屋で横になっていると、いつの間にか寝てしまいました。何分かして人の話し声で目が覚めました。
私は会社の寮に入っていて、人の「声」が聞こえていても別に気にしないのですが、その日は気になってしかたがありませんでした。
(その話し声は、今まで、感じたことのない「気配」の、「声」でした。)
今まで聞いたことの無い声なので誰の声だろうと聞こうとしましたが、聞こうとすると声が聞こえなくなり、寝ようと目を閉じると聞こえてきます。
しばらくそうゆう状態が続くと、起きているのか寝ているのかわからなくなりました。私は、気持ちがいいなあと思いそのままの状態で横になって目を閉じていると、声が頭の中に飛び込んできました。その声は私の頭の中で何回も同じ言葉を繰り返していました。私はどういう意味だろうと考えていると、いつのまにか眠ってしまいました。その日を境に「声」や「音」に敏感になり、仕事をしていても話し声や物音が聞こえてくると気になってしかたありませんでした。
(聞こえてくる声や音は少し甲高くて、頭の中にまとわりつくような感じでした。)
私は、仕事に集中して声や音を気にしないようにしていました。そうすることで何とか仕事をすることが出来ました。仕事以外の時間も、話し声や音を気にしないように、出来るだけ物事に集中するようにしました。
(集中すると、甲高い音は、聞こえるのですが、まとわりつくような音ではなく、透明感のある音に変わり心地よく感じます。)
(透明感のある音を聞くために、集中していたのかもしれません。)
集中した生活を繰り返していると、今までに感じた事のないことを、感じるようになりました。テレビを見ていてコマーシャルになると、私は一息つくために何も考えないのですが、ある日突然、一息つくことが出来なくなりました。一息のつき方が解らなくなりました。 それでコマーシャルを見る時も考えて見るようになりました。
(私は、こうゆう現象を自然に、受け止めました。)
休日など、私は車の運転が好きでよくドライブなどに行っていました。運転中はドライブテクニックの練習の日々で何もかも忘れることができてとても楽しかったです。
夜は、何か聞いて集中しないとまとわりつくような音が聞こえそうで眠れないので、ラジオを聴いて寝るようにしていました。
(おかしな声や音が聞こえていても、どうにか生活のパターンが出来て楽しく過ごしていました。)
集中することによってなんとか生活できるようになったのですが、次第に生活のパターンや自分自身に変化が現れてきました。
ある日突然、会社の先輩が信じられなくなりました。それと同時に後輩の出す音や声が耳障りに聞こえるようになりました。
私は、このままでは仕事が出来なくなると思い、頭の中で何とかしないといけないと思っていたのですが、日が経つにつれて会社の先輩に対する不安や後輩のことなどが頭の中でいっぱいになり考えることができなくなりました。しかし、私は会社では、悩み事が分からない様に平静を装っていましたが、ある日どうしていいのかわからなくなり、我慢できなくて、突然立ち上がりその場から出て行ったこともありました。出て行った後、しばらくして冷静を取り戻し、もといた場所へもどっていきました。
(この日を境に我慢できなくなると、席を外す用になりました。そんなときは、ひとりになれる所で、冷静になるまでじっとしていました。)
私は仕事が終わり一時間ぐらいドライブすると、頭がすっきりしてぐっすり眠れていましたが、日が経つにつれて1〜2時間走って眠ろうとしてもなかなか眠れなくなりだしました。私はとにかく頭をすっきりさせようと思い眠たくなるまで車の運転をしていました。気がついてみると、毎日朝の三時まで走っていました。疲れてそのまま車の中で眠った事もありました。
(こんな生活をしていても、朝目が覚めると疲れがなくなり、頭がリセットされたように感じていました。)
休日の朝、甲高い子供の声で目を覚ましました。その声は頭の中にまとわりついてきました。私は、まだ眠たかったので、布団の中に頭を入れ眠ろうとしましたが、声は小さくならず、頭の中で子供が遊んでいるイメージでいっぱいになりました。私は、おかしいと思い窓の外を見てみました。頭の中のイメージとは違うのですが、たしかに、お母さんと一緒に子供が歩道をあるいていました。
(私は、おかしいと思いながらも気のせいだと、自分に言い聞かせそのまま眠ってしまいました。)
テレビを見ていると、司会者が何か言うたびに会場から拍手や笑い声が起きるので、その司会者に関心を持つようになりました。その次の日から、おかしなことが起きるようになりました。テレビをつけたとたんに会場から拍手が起こったり、トイレから戻ってきて部屋に入ったとたん拍手が起こったりしていました。最初は偶然がつづくなぁと、思っていたのですが、夜ラジオをつけて眠ろうとして目を閉じていると、ラジオから、いつの間にか昼間の人気司会者の声がきこえてきました。私はおかしいなぁと思い聞いていると、私のことを話しているように聞こえてきました。わたしは、びっくりしてラジオ消し眠ろうとしましたが、頭の中に司会者が現れて話しかけてきました。しばらくの間、司会者の頭の中の声は消えてくれませんでした。仕方なく私は何を言いたいのか聞いていると、いつのまにか眠っていました。
(次の日からテレビを見ても声が聞こえてくるようになり、テレビを見ないようにしました。)
私は今おこっていることを考えることが出来ず、ただ流れるように日々を過ごしていました。
ある日、気がついてみると上司が私の前にいて何か話していました。私は、なぜ上司が私の前にいるのかよくわかりませんでした。しばらく考えていると、上司に呼ばれていることを思い出しました。しかしなぜ呼び出されたのか分かりませんでした。しばらくボーッと上司の話を聞いていると、病院に行ってはどうかと言われました。私は、なぜ病院に行かなくてはいけないのか、どこが悪いのかわかりませんでした。しかし信頼できる上司から言われたので何も聞かないまま、福岡の実家へ帰って行きました。
(病院へ行っても、「どこも悪くないです」と言われると思っていました。)
実家へ帰ってきてもどう過ごしたか覚えていません。気がついてみると診察室のまえでした。そこには精神科と書いていました。
(診察室では、先生の質問に答えるのが、精一杯でした。)
何回か診察をして家で母親に入院してはどうかと言われ、入院することにしました。入院は初めてでしたが、不安はありませんでした。
初めて精神科病棟に入って思ったことは、静かだなぁと思いました。こんな静かな所があるんだなぁと不思議に思いました。
入院生活はゆっくり出来るのかと思っていたのですが、1日経つのが早くて忙しく感じました。でも自分なりに楽しんでいました。
いつのまにか「声」や「音」を気にしなくなりました。主治医の先生は私に、病気の事について話してくれなかったし、私も聞こうとはしませんでした。とゆうより、先生が何を言っているのか、理解できなかったし、どうゆうふうに、「今の状態」を、先生に言えばいいのかわかりませんでした。私はこのまま入院してもしかたないと思い、退院しました。退院しても、何をしていいのかわからず、ボーとしていました。
(ボーッとしている間どこからともなく語りかけてくる声を聞いていました。)
何回かの入退院のすえ大阪で一人暮らしをすることになりました。
私は、一人暮らしは始めてでしたが、不安よりも楽しみでいっぱいでした。就職もすぐに決まり楽しい日々を過ごしていました。
ある日の夜、寝ようとすると感覚的ですけど、私の「胸の中」で女の人の泣く声が「聞こえて」きました。私は一瞬「不思議」だな、と思ったのですがどこかの女の子が彼氏から振られたのだろうと、勝手に解釈しそのまま寝てしまいました。
(その泣き声は、1週間ぐらいして、聞こえなくなりました。)
(それを境にして、いろんな不思議なことが、起こるようになりました。)
夜、女の人の声で目を覚ましました。回りを見ても誰もいません、私は夢でも見ていたのかなと思い、また眠りました。しばらくして、また女の人の声で目が覚めました。そうゆう事が何日か続きました。
私は、女の人が何か言いたいのだろうと思い、声が聞こえても目をあけずにそのまま聞いていました。しかし何を言っているのかわかりませんでした。
しばらくして、私は女の人は恋の悩みを誰にも打ち明ける人がいなくて、毎晩私に打ち明けているのだろうと自分なりに考えて、頭の中で女の人を諭すようにしました。
(何日かすると声は聞こえなくなるだろうと思っていました。)
女の人の声は夜に聞こえていたのですが、次第に昼間も聞こえるようになりました。次第に夜中になってもなかなか声が消えず眠れないので、毎日夜遅くまで町を歩きながら女の人を諭していました。休日などは朝から夜中まで町を歩きながら話していました。
(こんな生活をしていても疲れは感じませんでした。)
(女の人の声は物静かな声なので話しやすかったです。)
女の人の声で頭がいっぱいなのですが、それを忘れるくらい不思議な事が起こるようになりました。
それは「バチッ」とゆう音です。
私はこの「バチッ」とゆう音にずいぶん悩まされました。その音は窓の外から聞こえてくるように感じました。
その音は、部屋の中で何も考えていない私の一番気持ちいい瞬間にバチッと鳴ります。バチッと鳴るたびに頭の中を鉛で作られた蝿たたきで叩かれた様な感じになります。
私は音がするたびに音の鳴っている所を探し出そうとしましたが、見つけることはできませんでした。
私はあきらめて、バチッとゆう音から連想してガイコツ君のいたずらとすることにしました。
(このバチッとゆう音はアパートを出るまで聞こえていました。)
不思議な事はテレビを見ていても起こるようになりました。ニュース番組を見ていると、ニュースキャスターが話しかけてくるようになりました。最初は偶然に話しかけてくるように感じるのだろうと思っていたのですが、その偶然が続くので半分信じて半分は信じないようにして見るようにしました。日が経つにつれてテレビをつけたとたん話しかけてくるようになりました。次第に私はテレビを見ないようにしました。
(テレビの向こうから見られているような気がしていました。)
職場でも声が聞こえるような気配がして、思うように身体が動かなくなり辞めてしまいました。
(今の状態ではやっていけないと思い辞めました。)
声は私の頭の中だけでは収まりませんでした。私は考えるときは、心で考えるようにしていましたが、心の中にも不思議な声がする様になり、考えることができなくなりました。次第に私は思いつきで生活するようになりました。
お腹が空いたらご飯を食べ、不思議な声と話しながら町をぶらぶら歩き、眠たくなったら部屋に帰って寝る、そうゆう生活を繰り返していました。
(数ヶ月してお金も無くなりアパートを出て行きました。)
アパートを出てもお金が無いので思いつきで人のたくさん居る公園で座っていると、後ろから「にいちゃん、仕事せーへんか」と言われました。お金が無かったのでそのままついて行きました。ついて行くと十数人の人がバスに乗っていました。私もバスに乗り込み仕事場へいきました。仕事は簡単な土木作業でした。7日間泊り込みで仕事をして帰ってきました。バスを降りみんなの後について行くと事務所でお金を貰っていました。
(私は始めて日雇いの仕事がある事を知りました。今の私に合っていると思い暫く続けることにしました。)
お金を受け取りそのまま小さな食堂へ行きご飯を食べ、不思議な声と話をしながら町をぶらぶら歩きました。夜になると安く泊まれる所をさがし寝ていました。お金が無くなるまでそうゆう生活をしていました。お金が無くなると日雇いのバスを見つけ仕事へ行っていました。
(日雇いの仕事はいつも出来るとはかぎりませんでした。)
数ヶ月ぶらぶらですが生活をすることができましたが、日雇いの仕事をしているとだんだん身体が自由に動かなくなりだしました。私はこの先どうしようと思っていたのですが、前に不思議な声が東京へおいでと言う言葉を思い出し、東京へ行くことにしました。
次の日、東京へ着くとまず泊まるところを見つけるために宿を探しました。ただ泊まるのでは面白くないので健康ランドへ泊まるようにしました。
夜は健康ランドに泊まり昼間はバイト先を探しながら観光もしていました。
(このころは不安というものはぜんぜんありませんでした。)
(眠っている時意外は不思議な声と話をしていました。)
バイト先の条件は寮があることと、近くに駅がある場所にしました。
寮の有るバイト先は案外すんなり決まりました。ちなみに寮と言っても昔の木造作りの二階建てで一階が事務所と道具置き場です。二階が寮になっていて部屋が三部屋あり、それぞれの部屋に二段ベッドが三つずつ置いてあり足の踏み場は一畳もありませんでした。一階の事務所はいつもいっぱいで、私は寝るとき以外は東京の街をうろうろしていました。
(町をうろうろするのは慣れていたので、いつものように不思議な声と話しながら歩いていました。)
数ヶ月して身体が自由に動かなくなり仕事が思うように出来なくてこまっていると、新しい不思議なことが起こる様になりました。毎朝おばあさんが頭の中に現れるようになりました。私はなにか言いたいことがあるのかな、と思い様子を見ていると、私の腰を針の様な物で刺す仕草をするようになりました。最初は気にしていませんでしたが、毎朝針を刺す仕草で目を覚ますようになり私は不安を感じるようになりました。
(こうゆう不安を感じるような不思議な現象は初めてでした。日が経つにつれて不安が大きくなっていきました。)
ある日たまたま事務所が空いていたので椅子に座ってボーッとしているとテレビの声が耳に聞こえてきました。私はまたテレビの中から誰か話しかけてくるのかと思い、テレビを見ないようにしていました。しばらく横を向いてボーッとしていると耳に幻聴という初めて聞く言葉が頭の中に入ってきました。私はどうゆう意味だろうとテレビを見ていると現実にありえない声が聞こえてくる病気だといっていました。そこで初めて私は不思議な声や音が聞こえるのは病気だと知りました。でもすぐには、どうしたらいいのかわかりませんでした。何日かして、静かな場所がボーッと頭の中に現れてきました。でもその場所がどこだか、なかなか思い出せませんでした。その後二日ぐらいして病院内の風景ということを思い出しました。
(このころの私は2〜3人の幻聴と話をしていたので大変でした。)
このあと福岡に帰って入院しました。
8年間入院し幻聴の方は完全に治っていませんがうまく付き合えるようになり安定してきたので退院しました。
現在デイケアに通っています。
11月行事予定表
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26 藤松交流会 |
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28 旅行 |
29 旅行 |
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11月のイベント 長門の六角堂一泊二日 日付:11月28日(水) 13時〜29日3時頃まで 集合場所:ウエンディ本部 解散場所:ウエンディ本部 参加費:8560円。 プログラム 展望浴場が美しい温泉につかって、ゆっくりした時間を過ごしましょう。 発行 平成19年1月22日 NPO法人ウエンディ 800-0043 北九州市門司区緑ヶ丘10番19号 TEL & FAX 093−391−2167 http://www.wendy21.jp