2001−5月
ウエンディのNPO化
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精神障害者の社会復帰・社会参加を支援するという目的を掲げて自助会Wendy21がスタートしたのが、1998年の初夏。早くも2年が経ちました。この間、僕らに果たして何がやれたかと言うと、及ばなかった点ばかり思い出します。特に病気や意見の相違等で仲間が去っていった経験は思い出すのもとても辛いものでした。
今回NPO(特定非営利活動法人)に組織をバージョンアップする事になったのも、福祉・共益という本来の目的を推進する為に法人化という事が使命をより明確にし、活動をより活性化させてくれるのではと考えた為ですし、仲間を繋ぎとめる為の器作りでもあると思っています。
自助会がまだスムースに活動出来ていないのに、法人化なんて無理だという方々も多いとは思います。しかしながら、まず器だけでも固めていって、中身はそれからじっくり作っていく、そういうやり方もあって良いのではないかと考えています。
取り合えず今メンバーから挙がっているNPOの事業内容としては、障害者への情報啓蒙活動、ホームヘルプ事業、喫茶店、作業所授産事業などですが、この先議論や勉強を重ねて、更に具体化していきたいと思います。
「法人? 会社だろ? 精神病でそこまでは無理だろう」的な考えを持っている方々も、残念ですが多いようで、そういう意見を覆すだけの業績もまだ残せていないのは事実ですが、諦めずに夢を作って追いつづけましょう。
今活動の中心になっている本部作業所も、二年前は夢の一つに過ぎなかったわけですから。
「仕事なんかまだせんでいい、勉強なんかして頭使うな」そう言われるような状態の人もいない訳ではありません。確かに医療の観点から見れば、僕たちのやっている事は大きなリスクを持っているかも知れません。しかし、自分達の未来を自分達で作る、当たり前の事を、再発を恐れるあまり先延ばしにして、気がついたら20年、なんて事ではあまりに寂しすぎると思いませんか。
「障害はそれと戦うことで人生を豊かにする」
2000-08 Wendy21 米島健二
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前回の記事を見て、樋口さんが新聞の切り抜きをFaxしてくれました。
北海道の「浦河べてるの家」の活躍を記事にしたもので、「浦河日赤病院の精神化病棟を退院した人たちが12年前に10万円の元手で事業を始めて、今や年商1億円、百人を越す元入院患者が働くようになった」という記事でした(詳しくはコンテナに掲示してあるので読んでみて下さい)。
元気付けられるというか、希望が湧いてきました。
僕たちが目指すNPOは、非営利活動であり、純粋な商業では無いので、年商1億円というような目標を持つ事は少し意味が違うかも知れませんが、暮らして食べていくのに充分な収益を上げるという事は重要課題の一つだと思っています。
収益が無ければ、目的とする福祉活動も出来ないのですから、何で資金を得るかを考えるのは基本的な問題です。今「IT革命」の時代に、コンピュータを使って商いをするというウエンディのコンセプト自体は間違っていないと考えます。
ただ僕たちは障害を除けばあくまでも普通のおじさんやおばさん達であり、専門技術を持つ集団ではないので、大勢の同志をリードしていくのは容易ではなかろうと予測できます。
しかし、「浦河べてるの家」で働いている人達も恐らく主流は僕たちのような普通のおじさんおばさん達でしょうから、事業の方向性を彼らにならう事は非常に有益だと思います。
新聞記事によると彼らは、昆布加工、紙おむつの配達、住宅改造、清掃、引越し手伝い、ゴミ処理など、町の人が必要とするものを次々と見つけては事業化していったそうです。その考え方は、NPOの公益性という点からも僕らの参考になると思います。
「のけ者つくらぬ文化を」と題されたこの新聞記事は、まさしくこれから僕たちが目指さねばならない姿を先取りしているように感じました。
平成14年までにはNPO化したいと思っています。賛同者、協力者を広く求めていますので、
宜しくお願いします。
2000-09 Wendy21 米島健二
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来年の8月頃に北九州市から配布される予定の『精神障害者社会生活支援マニュアル』の製作に、ウエンディも当事者の立場から協力することになりました。
精神障害者だからこんな事が困った。こんな事が苦手だ。そんな社会生活をする上でやっかいなことがあれば、教えて下さい。『…マニュアル』執筆には、凄い人達がいますので、聞いてみたいと思います。
僕個人的には、現在分裂病ですが、困難を感じる事はあまりありません。頭が疲れやすいとか、人にぺらぺら喋られると訳が分からないとか、合唱団が頭の中にいるとか、じっとするのが苦手とか震えるとかぐらいです。この程度ですんでいるのは、家族や医療福祉関係の多くの援助があるおかげです。でも実際もっと苦労している方が多いでしょう。
この際だから声を大きくして、何が辛い、何が大変だと叫んでみませんか。困った人がいれば助ける人もいるのが今の世の中です。遠慮せず応援を求めましょう。
と、今回はNPOの話から少し離れてしまいましたが、困った人を助けるのがNPOの使命です。精神障害者が何に困っているかを調べずして、NPOウエンディは始まらないのです。
郵便でもFaxでもe-malでも良いので、ウエンディ本部まで、体験やお考えをお寄せ下さい。
採用された方にはもれなく宝飾のウエンディから記念品をさしあげます。
★★★
ついこないだ正月だったのにもう秋です。
年内にNPOウエンディの骨子を固めようと言っていたのですが、まあのんびり進めましょう。人数もまだ少し足りないことですし…。
★★★
以前まで昼休みはひたすら眠っていたのですが、最近散歩するように変えました。実はダイエットのためなのですが、本部にはスポーツクラブに通うほどリッチなメンバーもいまして、羨ましい限りです。
2000-10 Wendy21 米島健二
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未来は自分で作るもの。成功しようが失敗しようが、精一杯生きたなら決して後悔しないものです。
未来を悲観的に感じている人は、今をしっかり生きていません。何かを精一杯やっていますか? 頑張り過ぎると良くないとか、今は休養が大切とか、回りの意見に甘えて本当に何も考えてないのではありませんか。それでいて将来に対して漠然とした不安を抱えていたりします。そういう不安のほうがよっぽど病気に良くありません。過ぎたるは及ばざるというように、頑張り過ぎるのは良くないにしても、頑張らないのはもっと良くないと思います。
就労とか資格獲得とか、まだ無理なことに挑戦せよと言っているのではないのです。今出来る事で、明るい将来につながる事がある筈です。例えつまらない作業でも、一生懸命やることがリハビリにつながり、やがて自分の将来を明るくしていくことに繋がるのだと思います。
何をすればよいのか分からない人は、1日30分でも良いから考えてみることです。自分の将来に関して誰かと話してみることです。相手がいなければ書いてみるのがいいでしょう。
神様も世の中も、頑張る人に優しく、怠け者には厳しいものです。怠け者ではない、病気なんだから仕方ないと怒る人もいます。しかし同じ病気で同じ障害に悩んでいても、未来のために頑張って作業する人とそうでない人がいるのです。あなたならどちらを応援しますか。
病気なんだから何もしないで良いという人も多いのですが、そう言う人があなたの将来を保障してくれる訳ではないのです。頑張り過ぎて出てくる症状は勲章だと思います。乗り越えた後にキラリと輝くキャリアとなるように思います。
酒を飲んだりギャンブルにはまったりして再発するのと、仕事で無理して再発するのとでは、同じ再発でも全く違って見えます。症状は同じでも回復の度合いがまず違います。またどうせ再発する時は再発するのです。病気が完治していなかったという事です。恐れず再発するぐらい自分を鍛えて良いと、僕の場合はそう思っています。
2000-11 Wendy21 米島健二
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NPOなどと記号のような呼び方をするから、ピンと来ないような気がします。そこで今後は呼び方を変えます。僕たちの場合は、社会貢献活動をすることによって、社会参加し、それを職業とする事で、多少なりとも生活の糧ともするという都合の良い目論見を狙っていますので、「社会貢献会社」と、とりあえず、呼んでいきたいと思います。
会社なんだからお給料をもらって仕事をする社員が必要なわけですが、お給料が貰えて仕事もあるといえば、参加したいというメンバーは多いことでしょう。
一般の会社くらい給料がもらえたら、いいですね。ところで、そのお給料は誰が払うの? それはやっぱり社員が仕事をして稼がなくてはならないのですね。
この不況の世の中に、そうそう稼げる仕事があるでしょうか? ウエンディではNPO準備会というのを作って、考えています。僕たちに何ができるか。成果は会報で発表していきたいと思います。今後も目が離せませんね。ボランティアの西岡さんの活躍に期待しましょう。
2000-12 Wendy21 米島健二
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ウエンディのNPO化の話と平行して、作業所の社会福祉法人化の話が出ています。小規模作業所を5年以上続けると、小規模社会福祉法人というのに移行する事が出来る事になったのだそうです(NPOなら3年で)。その為には現在の作業所を小規模通所授産施設という規格に変えないといけないし、専門職の職員も必要になります。
現在ウエンディの若者3人が精神保健福祉士の資格取得を検討しています。うち一人は勉強も始めています。順調に彼らが資格を取得できればメンバー内で職員になる事が出来て、ウエンディ設立当初の趣旨に沿います。有資格の専門職以外にも事務職、指導員等社会復帰の糸口となる雇用が発生します。
精神障害者ホームヘルパーの資格はそんなに難しくないので、僕らでも取れそうです。現在4、5人で勉強会を開いています。一緒にやりたい方は参加して下さい。小規模通所授産施設の仕事よりNPOでのホームヘルプ事業の方が先行して始まる予定(平成14年より)なので、社会復帰と社会福祉の両方を目指す方は是非一緒にチャレンジしましょう。
★★★
NPOが社会福祉法人と異なる点の一つとして、営利事業が割と自由に行えることがあげられます。パソコン関係の仕事や現在構想中の様々な事業もNPOでなら継続できるので、方向修正の心配は不要だと思います。
2001-1 Wendy21 米島健二
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仏壇も神棚も無い家で育ったので、僕自身は無宗派です。でも精神病の体験の中で信仰というのは芽生えており、既存の宗教の中に近い考え方を見出したりする事も少なくありません。なんたら教団の何れかに属さなければならないという時代では無いし、個人的には親が逝くまでは浄土真宗という先祖から受け継いだものを大切にしてやりたいと思っています。
NPOは、宗教と政治と暴力を明確に禁じています。如何にそれが公益につながろうとも、特別な団体に支持したり支援されたりしてはならないのです。
そればかりか同族の役員数を制限し、親族による経営の独占も禁止しています。会社の利益も役員や株主で分けるのではなく公益事業に使わなければなりません。
NPOの公益性は、こういった一見自由主義に反するような制約で保たれています。
いやな人はNPOでなく、宗教法人とか株式会社とか他の会社を作れば良いのだし、こういった制約は、むしろ僕には好ましく思えます。
ウエンディの作業所も作業中は宗教と政治と金銭の話はなるべく慎むようにしています。誤解や意見の相違を生みやすい話題だし、精神障害者は勧誘行為に対して非常に無防備である場合が多いからです(狙わないように)。
宇宙の始まりの話とか、先端医療の話とか、へぇーそんな事もあるかねぇといった害の無い話をする事が多い。占いとか心理テストとかが好きな人も多い。面白いからつきあう事があるけど、あんまり押し付けがましいと「そんなん当たるか」と怒ったりもします(実は当たってたりして・・・)。
次回より、NPOウエンディの事業計画を発表していきます。
2001-2 Wendy21 米島健二
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現在、準備会で検討中のNPOウエンディの事業内容の概略を書きます。
(1) 特定非営利活動に係る事業
@ インターネット、情報誌等で、障害者に必要で安心な情報を提供する事業。
A 障害者へのポームへルプサービス事業。
B 障害者の就労支援活動事業。
C 障害者作業所、授産施設等の運営支援。
D 就労の場、憩いの場としての喫茶店経営。
E 社会復帰社会参加を支援するパソコン教室、生花教室等の運営。
F 障害者同志や健常者との親睦を深める各種イベントの企画。
(2) 収益事業
@ 園芸の花、苗、の販売。
A パソコンを使った事業。
データ入力、デザイン、軽印刷、ホームページ作成、ソフト開発など。B 入院患者への日用品販売
C 弁当宅配
D 物品製作販売業(到津の森内でのおみやげ開発と販売)
E 出版事業
となっています。こんな事業はどうかという提案をまだまだ受け付けますので、お便りを下さい。
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2001年中に設立しようと新年会で話し合いました。NPOウエンディが出来ても現在の自助会Wendy21や作業所ウエンディ本部がなくなったり著しく変化する事はないようです。NPOも自助会も作業所も、かかわる人全員の意思で動いていくべきものだからです。
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僕は今月からニチイ学館のホームヘルパー2級講座を始めました。NPOウエンディの障害者ホームヘルプ事業でバリバリ働けたらと思います。福祉ボランティアの西岡さんも9月過ぎには1級を取得されるそうです。ヘルパー事業はNPOウエンディの活動の中でも皆から最も期待されているもののようです。一緒にヘルパーの仕事をしてみたい方、どうぞどんどん声をかけて下さい。
2001-3 Wendy21 米島健二
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黒崎の作業所「エンパワー北九州」の松本さん達と一緒に九州日本信販の事業所を見学に行きました。市役所の木原さんの紹介で、ウィルの高田さんに連れていって貰いました。取締役営業部長の三代さんから九州日本信販の業務のごく一部でも作業所でやってみないかという提案を貰いました。5月の月例会の議題にします。作業所のメンバーは皆やる気満々です。うまく仕事が貰えたらいいですね。
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企業とビジネスをする上で、ウエンディをNPOにするという事は重要だと思います。個人でなく組織として契約できるからです。
NPOウエンディの目的は前号でも紹介した通り福祉事業ですが、利益を福祉事業に還元するというルールを守ればその他の営利事業も制限されていません。僕たちで可能な事はどんどん事業化していきたいと思います。
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自分が精神障害者であるという事をオープンにして働ける職場はとても少ないようです。それで隠して就職して、うまくやっている人も多いようです。でも無理しすぎて再発という方も少なくないのです。隠さないといけない職場と隠さなくてもよい職場のどちらかを選べるなら、オープンにしたいですよね。そういう職場を応援してくれる九州日本信販のような企業がどんどん増えてほしいものです。
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九州日本信販の業務として、まずアンサーという電話業務があるそうです。注意したいのは早朝とか夜間とか土日も業務がある事です。僕たち精神障害者は規則正しい生活をした方が良いので、シフトを組むのは結構大変そうです。でも自分たちでリズムを崩さないような勤務体制を作れば、やってやれない事はないでしょう。職場の皆が同じ精神障害者なのですから。仲間同士助け合って仲良く楽しくやっていけたらいいですね。
2001-5 Wendy21 米島健二