★趣旨
 Wendy21という組織をかいつまんで申し上げますと、「精神障害回復者の新しい形の社会復帰を目指す共同体」であります。新門司病院の榎本さんとウエンディの呼びかけで、北九州市門司区猿喰の「猿喰ふれあい野菜市」という職親の訓練生と新門司病院精神科デイケアの有志が集まり開設する事になった共同事業所です。
 従来、入院に到る程の精神病患者の社会復帰と言えば、病気もほぼ治り投薬量も減って、発病前より少しでもストレスの少ない職場を捜し転職や再就職する事でした。病状が治まったからといって、通院や服薬などのケアを怠ると、再発という場合が少なくありません。したがって就職口を捜すと言ってもなかなか大変な事です。親元を離れて東京で就職などとはとんでもない事。自宅で何か商売をやっているとか、親類の会社にコネで入れて貰うとか、ごく限られた人以外は職にあぶれている(または就職する自信が持てない)のが少なくない実状のようです。
 Wendy21は、そういった働く能力はあるのだけど職につけない回復者が共同体を作ることによって、自分たちの手で仕事を開拓し職場と収益を得ることが出来るようにしよう、という考えで開設するものです。
 単に当事者個人の集まりということでなく、会社という法人をその組織に含めた理由は、目下の社会事情から考えると、メンバーが最終的に勤務する形態として患者会の作業所の作業員とするよりも会社員とした方が各人のメリットが高いと判断したからであります。また経済活動を行う組織と致しましては会社という看板があるほうがスムースに商取引できると判断したからです。またメンバーを積極的に構成社員に登用したり利益を公平にメンバーに行き渡らせるようにする事により、組織の成長が一部の者の為でなく全体の成長に繋がる事を願っております。

 ★自らの手で開拓し能力を高める
 Wendy21がその他の作業所や職親と異なる点は、運営する主体が当事者自身であるという事です。単に経営者も障害者であるという事だけでなく、事業経営全般をメンバーの総意に基づいて行う共同体を目指しております。
 ただし決して家族や周りの人の援助を拒むという事ではありません。応援は大歓迎であります。よろしくお願い致します。
 またWendy21の活動への参加はあくまでも本人の意思によって行われます。しかし一方でWendy21は別の目標としてメンバーの就職やその他の社会参加も掲げておりますので、そういった活動の応援こそすれ、規制したり可能性を潰したりすることがあってはならないと考えています。

 ★仲間がいるから頑張る
 病気をひた隠し、ストレスと格闘しながら頑張っている社会復帰者も大勢いることでしょう。でもその多くは、職場で孤独な闘いを強いられています。僕自身も一度目の社会復帰はそんな状態でした。結局1年ほどで再入院という結果に終わったのですが。同じ境遇の仲間がいないという事は水を持たずに砂漠を一人で旅するような、そんな闘いに例え勝利していたとしても、全ての同じ障害者に同様の闘いを勧めることが出来るでしょうか。
 自分たちの手で仕事を開拓し、技術を磨いていくという事は、負担は大きいのかも知れませんが、ただ漠然と与えられた作業にのみ従事するよりも、気持ちの上で充実して張りが出てくるような気がします。そして現場で自分と同じ立場の仲間が頑張っているのを見る事が、共に助け合いながら仕事をする事が、やる気を増していくことに繋がればと考えています。

 ★専門家の力を借りて
 病状や投薬により、著しく「やる気」が無くなる状態があります。そういった時、「彼はやる気が無い、怠け者である」と結論づけて健常なそういう人に対する処理(叱責など)を行いますとますます症状を悪化させます。生きる意欲さえ失わせ自ら命を断つ悲しいケースさえあります。精神病の症状や薬理作用を知らない人が精神障害回復者を指導するという事は実にこんな命の危険性をはらんでいることも忘れてはなりません。ウエンディでは個々のメンバーと医療スタッフの繋がりをより強固にするように努める以外に、会社としても積極的に医療スタッフを顧問や役員に迎えるなど努力工夫をしていきたいと考えています。


    平成10年7月

      泣Eエンディ Wendy21
      米 島 健 二