『ヨーガ幸福への十二の鍵』 スワミ・チダナンダ より抜粋

神秘の一瞬

どのような形にせよ、宇宙に偏在する魂たちは現れます。彼らは、宇宙全体を住家とする真のコスモポリタンです。そして、生命を持つ者すべては偉大なる一体性の内に在り、兄弟姉妹であると言明しています。その教えは、人類の歴史の中で、形式ばった哲学や教理によって何度も否定され打ち負かされてきました。しかし、そのような扱いにもかかわらず、魂たちの教えが絶えることはありません。それはあたかも、冬の間、草原が雪に覆われているようなものです。長い冬を迎えるたびに、人々はその草原が無くなってしまったと思います。しかし、神はご存知なのです。春がきて地面が暖まり、再び太陽が輝き、雪が解け始めるころ残雪を押しのけて緑の新芽が顔をのぞかせます。何という驚くべき生命力でしょう。生命は絶えることがありません。同様に、聖人たちの教えもまた絶えることが無いのです。このような神秘の一瞬は、人類の歴史の中で折にふれ何度も繰り返し訪れています。
 そのような偉大な精神は、どのような民族、風土、時代に現れようともいつも同様な考えをもっています。彼らは、人類すべてにとって欠くことのできない隠れた一貫性への動かぬ証拠として生まれてきたのです。そのような人たちの抜きん出た人格は
多くの人間を勇気づけ、生気を与え、正しい道へと導きます。その偉業は、正しい努力をすれば人間はどれ程の高みに到達することができるかということを示してくれます。聖人たちは、人間の中にどのような潜在能力が隠されているのか、前途にどのような高尚な運命が待ち受けているのかを示唆しているのです。
 聖人たちの目には、あなたという人間が聖なる存在の不滅のきらめきとして写るのです。彼らは、あなたが宇宙の本質、始めもなく終わりもない、永遠不滅で無限の宇宙的実在の一部であると言います。生き延び、成長し、飲み食いし、いくばくかの感覚的な楽しみを享受し、少し笑い、少し涙を流し、そしてある日自己の証さえ残さずに死んで行く。あなたがここに生まれて来たのは、そんなことのためだけではありません。それでは肉体的な存在にしかすぎません。真の自己、永遠の命、聖なる本質。これらを実現することこそ、あなたの神聖な宿命だと考えることができます。
 この偉大な理想は、すべての人々にとっての目標として示されたものです。光明を得られた聖人や賢者たちは、次のように言っておられます。
「おお。この地球という現象界で奮闘し、もがいている人間たちよ。あなたたちに偉大なる発見を宣言しましょう。わたしたちは、それによってすべての心配事、痛み、苦悩から解放され、無上の歓喜で満たされるような体験を得ました。このすばらしい体験をあなたがたと分かち合いたいと願っています。来て、聞きなさい。わたしたちが達成したことは、あなたにも達成できます。わたしたちは、その姿を見るだけで死すべき運命が不滅の生命に変わるという、あの光り輝く宇宙生命と一対一で向かい合ったのです。」
 その永遠不滅の実在だけが、あなたに真の幸福を与えることができるのです。そして、その永遠不滅の実在は宇宙の支配者であるだけでなく、あなたという存在の奥深くに隠された核でもあるのです。あなたは、その永遠不滅の実在の一部なのです。この無上の幸福は、あなたの内側の奥深い場所にあなた自身の自己として眠っています。そして、一瞬たりともあなたから離れることはありません。一瞬たりとも不在にすることはありません。それはあなたの中に常に存在している真実なのです。
 感覚を通してそのことを知ることはできません。なぜなら、感覚は外に向けられているものだからです。知性を通して知ることもできません。静にして、考えることを止めて精神を内に向かわせてください。あなた自身が永遠の至福であるということを認識してください。静寂の中で、雷鳴のごとく「I−am」と宣言する、あの光り輝く存在に気づいてください。あなた自身を知り、勇敢で恐れを知らず自由であってください。





                   
 
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